良い日本語ドメインを登録しようと思って空きドメインを検索してみると、非常に良いドメイン名は全て既に登録されていて、まぁまぁ良いんじゃないかと思えるドメイン名もかなりの部分が既に登録されていることにお気づきになると思います。しかも、調べてみると有効利用されていないドメイン名がほとんど。一体どうゆうこと?誰が買い占めてるの?悪徳投資家?と思った貴方。悪徳かどうかは個々人の判断に任せるとして、投資家の部分は当たっています。日本語プレミアムドメインのほとんどは投資家の手に握られています。

このプレミアムドメインが有効活用されずに投資家の手に握られているという事実、何か間違っているんじゃないかと思われる人が非常に多いと思います。私も最初はそう思ってましたし、今でも時々そう思います。不動産で例えるなら、立地条件の良い土地が買い占められ有効活用されておらず、住宅を必要としている人は、条件の悪い土地に住まざるを得なくなっている。そんな感じでしょうか?正直、あんまり良い感じはしませんね。これをドメイン投資家のせいにするか、早いもの勝ちで好きなだけ登録できる制度のせいにするか、その制度で金儲けしている業者のせいにするか、人間の欲深き性質のせいにするか、それとも翻ってこの制度のお蔭で一つ一つのドメイン登録費用が抑えられていると考えて良しとするか、人によって分かれるところと思いますが、まぁ圧倒的にドメイン投資家を悪と考える人が多いのが現実でしょう。

さて、このコラムでは、このどちらかというと嫌われることの多いドメイン投資家たちの素顔を、ひょんなことから自分も日本語ドメイン投資家となり、10年以上にわたって多くの投資家と知り合うことになった私が、自らの経験を踏まえて簡単に紹介してみようと思います。

まず私自身についてですが、日本語ドメインについて知ったのは十数年前、ボルネオ旅行から帰ってきて、ボルネオ自然探訪記というホームページを開設した時でした。ホームページ用のドメイン名を探していて、最初は英語の「borneo.com」が欲しかったんですが、既に使用されていて断念。その時、日本語ドメイン名というのがあることを知り、じゃあ日本語の「ボルネオ.com」ならどうかと思ったのがきっかけでした。その日本語ドメインが外国のドメイン投資家に登録されているのを知り、なんで外国人が日本語ドメインを取っているんだ。腹立たしい。と感じたのを良く覚えています。更にドメイン名というものが早いもの勝ちであることを知り、自分が興味のある分野から始めて、良さそうなドメイン名を探してみましたが、本当に良い日本語ドメインは全て先に取得されていました。仕方がないので、ボルネオ自然探訪記にはローマ字表記の「boruneo.com」を採用、他に「toraberu.com」や、響きの良さそうな日本語ドメインを幾つか登録してみましたが、どうも愛着が沸かず、その時登録したドメインは数年後には全て手放してしまいました。

その後知りましたが、私のようにホームページに採用するためのドメインを探していて、ドメインが早いもの勝ちであると知り、日本語ドメインを含む様々なドメインを検索し、良さそうなものをとりあえず確保しておこうという形でドメイン投資を始める人は少なくありません。日本のホームページ制作業者さんとか、かなりがこのケースだと思います。いざ使いたくなった時にドメインがないと嫌だし、良いドメインを取っておけば使わなくても高く売れる日が来るのではないかと期待するわけです。ホームページ制作業者さんなら、顧客に売却したりレンタルする選択もありますから、良いドメインが安く手に入るのなら先行投資しておくことにビジネス合理性を見出すのは自然なことです。個人も同じで、アフィリエイトなど商用ホームページで生計を立てている人やこれからオンラインビジネスを始めようとしている人が必要なドメインを登録するついでに必要ではないドメイン名も転売目的で取得するケースが多々あります。他人が使いもしないドメイン名を登録していることに最初は腹を立てても、ドメイン登録制度が早いもの勝ちなので、ついつい自分も使う予定がないドメインを登録してしまったりするわけです。或いは、使うつもりでドメインを登録して、実際にホームページを開設してみたのは良いけれど、全然儲からないのでホームページは諦めて、ドメインだけ高く売れる日が来るのではないかと夢を見続けたりします。

では外国のドメイン投資家はどうなのか?そもそも日本語を理解しない外国人がなぜ日本語ドメインを大量に買い占めているのか、これは悪質なドメインスクワッターに違いないと思われるかも知れません。私もそういうイメージでした。そのため、外国の日本語ドメイン投資家が多く集まるフォーラムに参加するのに最初は大きな抵抗を覚えましたが、いかんせん、彼らがプレミアムドメインを大量に確保していたので、彼らと接触するしか良いドメインを入手する方法はありませんでした。で、「これは外人から日本語ドメインを取り返すためなのだ」などと勝手に自分に言い聞かせて正当化しながら、フォーラムに参加、その後多くの外国人投資家と知り合うことになったわけですが、最初に想像していたほど質の悪い人はほとんどいませんでした。(全くいなかったわけではありませんし、質の悪い人ほど目立っていましたが。)ドメイン投資家の中で本当に悪質なのは有名人や有名ブランド・商標名のドメインを登録してそれらを権利者に高く転売しようとする人たちで、彼らをドメインスクワッターと呼ぶわけですが、この種の悪質投資家は日本語ドメインに関して言う限り、むしろ日本人の方が多いのでないかというのが私の印象です。

外国のドメイン投資家について言えるのは、まず欧米を中心に、ドメイン名を投資対象することを極めて自然に捉えている人が多く、それが日本語ドメインだろうがロシア語ドメインだろうが、儲かりそうなら躊躇なく投資するという、ある意味さっぱりした態度の人が多いことでした。金融に強いイスラエルやイギリスの投資家が存在感を発揮していたり、アメリカのヘッジファンドに勤めているような人が日本語ドメインに投資していたりして、面白いなと思いました。欧米ではドメインマーケティングが盛んで、日本のように「何々のキーワードで検索してね」などという宣伝はあまりないので、短くて覚えやすい日本語ドメインの潜在的市場価値を高く評価して疑わず、私から見れば極めて非現実的な期待を日本語ドメインにしている人たちも数多くいました。ただ、大多数の非現実的な投機家と現実的な投資家が混在しているのは外国も日本と同じで、中には日本語ドメインを使って実際にホームページ作成に取り組んでいた/いる外国人投資家もいます。

外国人が日本人のドメイン登録者にメールなどで連絡してドメインを購入したり、更にそれをドメイン投資家の間で売買するといったことがなされ、それらの取引が一種の日本語ドメイン売買相場のようなものを作り上げてきた節もあります。ただ、常に外国人ばかりが日本語ドメインを購入していたわけではなく、日本の会社が外国人から日本語ドメインを買い取るということも私が知ってるだけで何件かありました。基本、それらの取引は公表されていませんが。

詳しいアンケート調査を実施したわけではないのではっきりしたことは言えませんが、これまで日本語ドメインで利益を出すことができた外国人投資家は1割よりずっと少ないと思います。それでも、立ち回りの上手な投資家は確かに存在し、上手く売り抜けた中国人投資家や、なんだかんだで利益を出してきたであろうビジネス上手の欧米の投資家を私は知っています。その人達に共通して言えることは、日本語ドメインの中でも特にプレミアムなドメイン名に特化し、数ではなく質を重視していたということです。だからこそ、良いオファーを受けたり、買い手を見つけることができたのだと思います。そして、面白いことに、私の知る限り日本語ドメインで最大の売上を出したグループは、総トータルで見ると、やはり私の知る限り最大の損失を出したということです。彼らは2000年に日本語ドメインを含む国際化ドメインが登場した際に大量にドメインを登録し、それらを15年ぐらい更新し続け、ある時すごい額の売上を出したのですが、私の計算が正しければドメイン登録維持費用のおそらく半分も回収できなかったと思います。そして、最終的にはほぼ全ての日本語ドメインを失効させ、大赤字のまま投資を終えたのだと思います。豊富な資金力があったからこそ出来たことでしょうが、ちょっと気の毒ですね。

以上、私が知る日本語ドメイン投資家の素顔を簡単に紹介してみました。あえて結論を言うとすれば、ドメイン投資家と言っても人それぞれ、色んな種類の人がいるということです。